不可抗力 

 「不可抗力による災害」と「不可抗力による労働災害」ということを考えることがあります。
 「不可抗力」というのは、一例では「人の力ではどうすることもできない大きな力や事態のこと。または、必要と認められる注意や予防法を講じても、なお被害を防ぐことができないことをいう法律用語。」などと説明されています。
  とりあえず、単純に「不可抗力による災害」は「人の力で抗うことの出来ないものによって引き起こされる被害」とします。たとえば東日本大震災のような巨大な自然力による災害です。人の力では被害を防止することが出来ないものは現実に存在するのです。
  すなわち、「不可抗力による災害」は防げないものと認めざるを得ません。しかし、私は、「不可抗力による労働災害」は防げると考えています。自然とか物の被害は防げなくても、人的被害は防げるはずです。その方法があることは、皆様も否定されないと思っています。
  現に、東海地震等を想定して人的被害を防ぐ準備が進められていますし、原子力発電所の安全性の検討も、人的被害を防ぐために具体的に進められています。過去には「不可抗力としてあきらめていた人的被害の防止策」が具体的に進められ、その「行動・対策」が現実のものとなってきています。これらの動きと相まって、各事業所の「安全文化」も高度化を図っていかなければなりません。
  要は、事前に危険を適切に見積もり、想定して、その危険に対処する方法を作り上げて、実際の危険に対して正しく行動することです。
  昔は、「不可抗力」ゆえの労働災害(人的被害)はやむなしと容認されていたのでしょう。
  今は、「不可抗力」は現に存在し、不可抗力による(物的)災害はある程度覚悟しなければならないが、「不可抗力による人的被害」は事前の想定、準備によって防止することが出来る、防止しなければならないと考えるようになったのだと思います。
  安全に関する技術と考え方が進化してきたのです。人の危険をとことん想像して知恵を絞れば、必ず対策はあるはずなのです。
  そして更には、もしかしたら、将来は、「不可抗力」そのものの存在が否定され、誰もが「不可抗力って何?そんなものありえない!」と言っているかも知れません。

2020/07/03  (  文責 : 丸山ひろき )